三池のすばらしい端折りぶりに感服!

貴志祐介作 「悪の教典」(上・下)読了です。
通勤電車の中だけ(しかも朝は大半が爆睡時間w)だったので、4日くらいかかっちゃいました。やれやれ…文庫で4日はかけすぎだわ(笑)

ストーリーは端折ります(笑)
あ、ここからはガンガンネタバレ(映画・小説両方)するつもりなので、読みたい方は反転してください。

まず、映画。
最後は「to be continued」という文字がでて終わります。
映画鑑賞時は原作未読だったので「あー、原作の一部の話をやってるんだ」と思っていましたが、違いました。でも、どうして?と思ったら、原作文庫版のあとがきに三池氏(映画版監督)が寄せたメッセージの中に答えを見いだしました。

三池氏は、文庫版に寄せたメッセージの中で貴志祐介氏に「一日もはやく蓮実を復活(娑婆に出せ)させてほしい」ということを書いていました。もちろん、作中で(復活)という意味ですが…。それが、劇中の「to be continued」につながったのだな、と読んで納得しました。

ですから、劇中の「to be continued」は二通りの意味なのかなーと解釈しています。
1つ目は先述の通り、三池氏の希望。
2つ目は、逮捕された蓮実におそらく精神病の判定が下り、出所(もしくは精神病院送り→脱走)したら、「君たち(片桐・夏越・安原)の次はないぞ」という余韻を持たせるため。

2つ目は私が勝手に思ったにすぎませんが、原作のあの後味悪い終わり方を少しでも表現したかったのかな…と思いました。

シャッターマガジンかなにかか忘れましたが、二階堂ふみが「三池氏は画作りにこだわる人」だと言っていましたが、ラストシーンの夏越が片桐を後ろから守るように抱きしめ、二人で蓮実を睨みつけて終わる…という画は後味の悪さと怖さを表現していました。

原作を読んで、「ははー!」と唸ったのは、三池氏の「潔い端折りっぷり」です。ハードカー・文庫共に上下巻にまたがる長編を2時間の枠へおさめるにはかなり思い切りのいい端折りが必要になってきます。それを見事におさめた端折りっぷりはすごい!の一言です。しかも、なんの違和感もなく、原作中のキャラを切り捨て、設定をだぶらせる(釣井がその典型)のは圧巻でした。

さらに、主要生徒の「死に方」も改変されているところはありますが、あの枠内へおさめるには実に潔い改変だと思いました。原作中のキャラクターは少々、自分勝手なところもありますが、そこは「大衆向け映画」にするため、やはり「御涙頂戴」系のキャラ設定もありました。(アーチェリー部のキャプテン高木君とお互い思い合ってるけど、まだつきあってない…という設定のさとみちゃんなんかは映画版オリジナル設定です)

加えて、原作中では学校殺戮計画は蓮実が「我が身可愛さ」でとっさに計画したことですが、映画ではもうずっと以前から計画されていたかのような落ち着きぶりでした。そこがまた視覚に訴える「映画」としては最高に恐怖が増幅される演出だったなーとあとから感じております。

早水圭介の役どころなんかも、一切の無駄を排除した設定になっていますし(養護の教師と肉体関係がある、大麻常習者…などの設定は排除)、釣井と関わるシーンはありませんが、映画ではうまく取り入れて端折りの完成度をあげております。

原作を読み終えて、なお余韻に浸っている途中ですが、オチはわかっているのに次が気になってページをめくる手がとめられませんでした。うん、貴志祐介作品は青の炎につづいて2作目ですが、青の炎もこんな風にのめり込んでました。貴志作品には怪物がいる(笑)

それを三池氏が映像化したことにもすごさを感じます。
これは私の好きな映画に入るでしょうねー。演じた俳優さん達も原作とは違ったキャラクターでも、違和感なく(山田孝之とかもう…アレw)作品にとけ込んでますし、吹越満演じる釣井も最高に気味が悪いです。あの人なくして、蓮実の「表の顔はいい人」ぶりは表現できないでしょうね。対比させるものがないから。ホントにいい仕事してました。釣井の自殺シーンも首ののびた死体が妙なリアル感があって気持ち悪いというより、気味が悪すぎて目が離せない状態でした。

もう一つ印象のつよいシーンがありまして、美彌が初めて蓮実と関係を持つシーンなんですが、シャワーを浴びようと上の服を脱いだ蓮実の背中に傷があることを知った美彌が、どうしたのか、と聞いた後の蓮実の雰囲気が原作よりよかったです。原作ではとくに間を置くことなく「別に話すほどのことじゃないよ」の一言で片付きますが、映画ではソファに座った美彌の目線でカメラが置かれ、蓮実がしばしの沈黙の後カメラ(美彌)を振り返って「…別に…話すほどのことじゃないよ」と一見優しそうな笑顔(でもちょっと悲しそう…)で言い放つのですが、その笑顔と声色は有無を言わせないすごみがありました。
たった数秒のシーンですが、これほど鳥肌のたったシーンはありませんでした。

かの有名な選挙アイドルのメンバーが「命が軽んじられているので嫌い」と言い放っていましたが、ここまで心理的恐怖を軽快に描いている邦画も少ないと思います。(炎上マーケの一種であることは承知で釣られてみましたw)

伊藤英明は海猿よりこっちのほうが絶対にあってると原作を読んで確信しました(笑)DVD、買っちゃおうかな(笑)

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